いつも見ているBid / Askは、誰の価格なのか
MT4・MT5を開くと、USD/JPYにはBid / Askが表示されています。
たとえば、
Bid 150.100 / Ask 150.103
という数字。
私たちは、この価格を見ながら買うか、売るかを判断しています。あまりにも見慣れているため、普段はその「出所」を意識することはほとんどありません。
第05話では、Order BookやDOM、Volumeなどを追いながら、Spot FX全体を一枚の画面ですべて観測できるわけではないことを見てきました。
そこで今度は、市場の奥を見るのをいったんやめて、自分の取引画面へ戻ってみます。
MT4・MT5には、今この瞬間も価格が届き続けています。
150.100。
次の瞬間には150.101。
さらに150.099へ。
私たちの画面には、こうして絶えずBid / Askが表示されています。
ここで、これまでとは少し違う方向から見てみます。
では、MT4・MT5に表示されているこのBid / Askは、いったいどこから来た価格なのでしょうか?
ここからは、これまでとは進む方向を反転させます。
Traderの注文を追って市場の奥へ進むのではなく、市場側から自分の画面へ向かって、価格が通ってきた道を逆向きにたどってみます。

「市場の価格」がそのまま届いているのか
前の章では、MT4・MT5に表示されているBid / Askを逆向きにたどることにしました。
では最初に、
「市場にある価格が、そのままFX業者を通って自分の画面へ届いている」
と考えてよいのでしょうか。
第03話で見たように、Spot FXには一つの中央取引所があるわけではありません。
複数のVenueや市場参加者が存在し、それぞれの場所でQuoteが提示されています。
つまり、FX市場のどこかに一つの共通Price Feedがあり、それがすべてのFX業者へ同じ形で配られている、という構造ではありません。
ここで、「市場の価格」という言葉を少し慎重に見てみます。
同じUSD/JPYでも、市場のどこを見ても同じ一組のBid / Askが存在しているわけではありません。
では、自分の画面に表示されているBid / Askの出所を知るには、もう少しFX業者側へ近づいてみる必要があります。
どのような価格を基に、顧客向けのQuoteを提示しているのか。
ここが、次に見る場所です。
「Market → FX業者 → MT4・MT5」という一本線だけでは、まだ肝心な部分が見えていません。
その価格のもとをたどると、いったい「どこ」へ行き着くのか。
ここを確認しなければ、MT4・MT5に表示されているBid / Askの出所まではたどれません。
そして、ここで一つ新しい手がかりが出てきます。
Price Source
まずは、この正体からたどってみます。

Price Source――FX業者は何を基に価格を提示しているのか
前の章でたどり着いた手がかりが、Price Source(価格の供給元)でした。
ここで見たいのは、単純に「市場の価格はどこにあるのか」ではありません。
FX業者が顧客向けのQuoteを提示するとき、その価格を何から導き出しているのか。
この視点から、もう少し奥を見てみます。
これまでの旅では、LPやVenueといった存在がすでに登場しました。
第02話ではFX業者の外側にいる接続先として、第03話では分散したSpot FXを構成する一部として見てきた存在です。
今度は、それらを価格がTrader側へ戻ってくる方向から見直します。
LPやVenueなどをPrice Sourceとして利用する構成もあり、何を基準として顧客向けQuoteを提示するのかは、FX業者の構成によって異なります。
ここで一つ、確認する軸が見えてきます。
「このFX業者は、何をPrice Sourceとしているのか」
という視点です。
Price Sourceは一つとは限らない
Price Sourceという言葉を見ると、一つの供給元から価格が届いている姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、利用するSourceの数や組み合わせは一律ではありません。
複数のSourceからQuoteを取得する構成もあります。
たとえば、複数のLPやVenueなどをPrice Sourceとして利用する構成です。
もちろん、すべてのFX業者が複数のSourceを利用しているという意味ではありません。
どのSourceを、いくつ利用しているのか。
その組み合わせはFX業者によって異なります。
Price Sourceは、顧客向けQuoteが何を基に提示されるかを見る手がかりです。
だからこそ、
「FXの市場価格がFX業者へ届く」
という一文だけでは、まだ情報が足りません。
その前に、
どこをPrice Sourceとしているのかを見る必要があります。
Price Sourceを見ると何が分かるのか
Price Sourceが分かると、自分の画面に表示されているPriceが何を基準として提示されているのか、その背景が少し具体的に見えてきます。
逆に、FX業者の名称や取引方式のラベルだけを見ても、この部分までは分かりません。
同じUSD/JPYを扱っていても、
どのSourceを基準にしているのかまで同じとは限らない。
ここまで来ると、H2-1で見ていた一組のBid / Askにも、その後ろにもう少し具体的な景色が見えてきます。
ただし、まだ一つ確認していないことがあります。
価格のSourceと、Liquidityへ接続する先は、同じものなのでしょうか?

Price SourceとLiquidity Sourceは同じなのか
前の章では、FX業者が顧客向けQuoteを提示するとき、何をPrice Sourceとしているのかを見てきました。
そこで残ったのが、
価格のSourceと、Liquidityへ接続する先は、同じものなのでしょうか。
という疑問です。
ここで視点を少し分けてみます。
Price Sourceで追っていたのは、顧客向けPriceが何を基に提示されているのかという価格側の話でした。
一方、Liquidity側で見たいのは、注文やHedgeをExecutionする際、どの接続先が使われるのかという側面です。
この接続先を、ここではLiquidity Sourceとして見ていきます。
似た場所を指しているようにも見えますが、この二つを最初から同じものとして扱うことはできません。
同じSourceになる場合もある
まず、Price SourceとLiquidity Sourceが重なる構成はあります。
たとえば、同じLPやVenueが、価格の参照先とExecution側の接続先の両方になる構成です。
この構成だけを見ると、
価格の参照先=Execution側の接続先
と見えます。
ただし、ここから「Price SourceとLiquidity Sourceは同じものだ」と一般化することはできません。
それは、その構成では両者が重なっているということです。
別のSourceになる場合もある
反対に、顧客向けPriceの基準として利用するSourceと、注文やHedgeをExecutionする接続先が分かれる構成もあります。
つまり、
どこをPrice Sourceとしているか
と、
Liquidityを得るために、どこへ接続しているか
は、別々に確認できる項目です。
Price SourceとLiquidity Sourceは、重なる場合も分かれる場合もあります。
ここまで来ると、価格の出所だけを確認しても、注文側の経路まですべて分かるわけではないことが見えてきます。
複数のPrice Sourceを利用するとき、それぞれのQuoteはどう扱われるのでしょうか?

複数のPrice Sourceを使うとき、Quoteはどうまとめられるのか
前の章では、Price SourceとLiquidity Sourceを分けて見ました。
そこで残ったのが、
複数のPrice Sourceを利用するとき、それぞれのQuoteはどう扱われるのでしょうか。
という疑問です。
たとえば、複数のLPやVenueをPrice Sourceとして利用している場合、それぞれから同じUSD/JPYのQuoteが得られることがあります。
ただし、それらがすべて同じBid / Askを示しているとは限りません。
単純化した例で見ると、
Source Aでは、
Bid 150.100 / Ask 150.103
Source Bでは、
Bid 150.101 / Ask 150.104
といったように、Quoteに違いが生じることがあります。
では、こうした複数のQuoteをどう扱うのか。
ここで登場するのが、Aggregation(集約)という仕組みです。
Aggregationは何をまとめているのか
Aggregationでは、複数のSourceから得られるPrice StreamやQuoteをまとめて扱う構成があります。
ここで押さえておきたいのは、AggregationによってSpot FX全体を代表する唯一の市場価格が作られるわけではないという点です。
Aggregationが扱うのは、あくまでその構成で接続しているSourceから得られるPrice StreamやQuoteです。
つまり、どのSourceへ接続しているかによって、扱うQuoteの範囲も変わります。
Aggregationは、複数Sourceから得たQuoteをまとめて扱う仕組みです。
Aggregationの方法は一つではない
複数のQuoteを集めたあと、どのように扱うかも一律ではありません。
複数のSourceから得たPriceを比較したり、一定のルールに基づいて利用するQuoteを決めたりする構成があります。
ただし、
「Aggregationを使えば、必ず最も良いBid / Askがそのまま採用される」
とまでは言えません。
どのSourceを利用し、集めたQuoteをどのように扱うのかは、その構成によって異なります。
ここまでたどると、Bid / Askの後ろに、
複数のPrice Source
↓
複数のQuote
↓
Aggregation
という処理が入る場合があることが見えてきます。
ただし、Aggregationによって複数のQuoteを扱ったとしても、まだTraderの画面までの経路は見えていません。
こうして扱われたQuoteは、どのようにTraderの画面まで届くのでしょうか?

Price Feed――価格はどうやってMT4・MT5へ届くのか
前の章では、複数のPrice Sourceから得られるQuoteをAggregationによって扱う構成まで見てきました。
ただ、まだ価格はTraderの画面まで届いていません。
では、こうして扱われたQuoteは、どのようにMT4・MT5まで届くのでしょうか。
ここで、もう一つの手がかりを見てみます。
Price Feed(価格配信)です。
MT4・MT5が、世界共通のFX価格を独自に作って表示しているわけではありません。
Terminalに表示されるQuoteは、接続しているFX業者側のTrading Serverから届きます。
つまり、私たちが普段見ているBid / Askには、
どこを価格の供給元としているのか
というPrice Source側の話だけでなく、
そのQuoteがどのようにTrader側へ配信されてくるのか
というもう一つの経路があります。
ここでは、この配信側をPrice Feedとして分けて見ていきます。
Price Sourceは供給元、Price FeedはQuoteの配信として分けて見ます。
ここまでをつなげると、少しずつ画面までの道筋が見えてきます。
Price Source
↓
必要に応じてAggregation
↓
FX業者側のTrading Server
Price Feed(Quote配信)
↓
MT4・MT5
↓
Trader
Price Sourceから得られるQuoteを基に、FX業者側で顧客向けPriceを導出・提示する構成もあります。
Price Sourceから得たQuoteが、そのまま無加工で顧客画面へ届くとは限りません。
ここで、第05話から残っていた二つの手がかりがつながりました。
どこから? → Price Source
どのように? → Price Feed
市場側から逆向きにたどってきた価格の経路は、ようやく私たちのMT4・MT5までつながりました。
では、このRouteを知るために、FX業者の説明でよく目にするDD / NDDという言葉は、どこまで役に立つのでしょうか。
DD / NDDというラベルを見れば、ここまでのRouteまで分かるのでしょうか。

DD / NDDというラベルでRouteは分かるのか
ここまで、Price Source、Aggregation、Price Feedと順番にたどり、MT4・MT5へ価格が届く経路を見てきました。
では、FX業者の説明でよく目にするDD / NDDという言葉を見れば、こうしたRouteまで分かるのでしょうか。
DDはDealing Desk(DD)、NDDはNo Dealing Desk(NDD)を表す言葉です。
名前だけを見ると、
DDとNDDのどちらなのかを知れば、そのFX業者の仕組みも大まかに分かる
ように思えるかもしれません。
ここでは、そのラベルから実際にどこまで読み取れるのかを見てみます。
DDという言葉だけでは見えないもの
あるFX業者がDDという言葉で説明されていたとしても、それだけで、
- 何をPrice Sourceとしているのか
- 顧客向けQuoteをどのように提示しているのか
- どの取引先とつながっているのか
- Riskを具体的にどのように管理しているのか
まで一つに決まるわけではありません。
つまり、DDというラベルだけから、ここまで追ってきたRoute全体を復元することはできません。
ラベルから見える部分と、その奥にある実際の構成は分けて考える必要があります。
NDDという言葉だけでは見えないもの
では、NDDならどうでしょうか。
No Dealing Deskという名称から、
「FX業者が間に入らず、注文がそのまま外部へ流れている」
という姿を思い浮かべることがあります。
しかし、NDDというラベルだけを見ても、
- Price Source
- 取引先との関係
- 顧客向けQuoteの作り方
- Execution Route
の詳細まで自動的に決まるわけではありません。
NDDという名称を掲げているからといって、どこからPriceを得て、注文がどこへ向かうのかまで一つの経路として確定するわけではないということです。
DD / NDDだけでは、Price SourceやExecution Routeの詳細までは分かりません。
A-Book / B-Bookとは別の軸で見る
ここで、第01話で追ったA-Book / B-Bookを思い出してみます。
あのとき見ていたのは、顧客の注文を受けたFX業者が、そのリスクをどのように扱うのかという側面でした。
今回見ているのは、
価格がどこから来るのか
そして、
注文がどのようなRouteを進むのか
という側面です。
似た言葉として並べられることはありますが、同じ軸ではありません。
「DD=B-Book」「NDD=A-Book」と一律に対応させることはできません。
ここまで見てくると、DD / NDDというラベルだけで取引環境の全体像を判断するのは難しいことが分かります。
では、もう少し具体的にRouteを表しているように見えるSTP / ECNならどうでしょうか。
STP / ECNなら、「市場へ直結している」と言えるのでしょうか?

STP / ECNなら「市場直結」と言えるのか
DD / NDDというラベルだけでは、Price SourceやExecution Routeの詳細までは分からないことを見てきました。
では、もう少し具体的に見えるSTP / ECNならどうでしょうか。
FX業者の説明では、この二つが並んで登場することがあります。
この二つを単純なRouteへ置き換えると、
「STP / ECN → 市場へ直結」
という一本線にも見えてしまいます。
ただ、この二つを同じ種類のラベルとして見ると、Routeをかえって分かりにくくしてしまいます。
ここでも、言葉を一つずつ分けて見てみます。
STPは何を示す言葉なのか
STPは、Straight Through Processingの略です。
少なくともNFAのRetail Forex Dealer向けルールでは、STPには具体的な定義があります。
顧客注文に対応するOffsetting Position(相殺するためのポジション)を、別のCounterparty(取引先)との間で、人の介入や例外処理を挟まず自動的にExecutionする仕組みです。
つまりSTPは、この文脈では注文処理やExecution側を見る言葉です。
ただし、ここには重要な境界があります。
NFAのSTP定義を、世界中のすべてのFX業者へそのまま一般化することはできません。
STPという名称があるからといって、
Trader → FX業者 → インターバンク市場
という一本のRouteまで自動的に決まるわけではありません。
実際、NFAはSTPを利用する場合でも、顧客がインターバンク市場へ直接アクセスしているかのような表現を認めていません。
ECNは何を示す言葉なのか
では、ECNはどうでしょうか。
ECNは、Electronic Communication Networkの略です。
FX市場では、複数の参加者が電子的に取引するElectronic Trading Venueの一形態として実在する言葉です。
ここで見えてくるのは、STPとの違いです。
STPが注文処理やExecution側の文脈を持つのに対して、ECNは取引が行われるVenue側を指す言葉です。
また、ECNだからといって、
「優良なFX業者である」
ことを意味する称号でもありません。
どのECNへ、誰が、どのような形で接続しているのかは別に確認する必要があります。
そもそも同じ階層の言葉ではない
ここまで分けてみると、STP / ECNを単純な二つの「Broker方式」として横に並べること自体が少し不自然に見えてきます。
STPはProcessing / Execution側。
ECNはVenue側。
見ている場所が違います。
STPとECNは、そもそも同じ階層の仕組みを示す言葉ではありません。
そのため、STP / ECNという名称だけから、特定の接続先やExecution Routeを決めることはできません。
「インターバンク直結」という一本線には戻らない
ここで、第02話・第03話までの旅を少し思い出してみます。
私たちはすでに、
Trader → FX業者 → インターバンク市場
という単純な一本線だけでは、Spot FXの構造を十分に説明できないことを見てきました。
STPやECNという言葉が登場したからといって、ここでその一本線へ戻る必要はありません。
STPだからといって、Trader自身がFX業者を介さずインターバンク市場へ直接アクセスしているとは言えません。
ECNという言葉だけからも、顧客がインターバンク市場へ直接アクセスしているとは結論づけられません。
見るべきなのは、
どんなラベルが付いているか
ではなく、
どのPrice Sourceを使い、どこへ接続し、注文がどのようにExecutionされるのか。
という具体的な構成です。
ここまで来ると、Price Source、Price Feed、DD / NDD、STP / ECNという言葉が、少しずつ同じ地図の上に並び始めます。
ただ、その地図には二つの方向が混ざっています。
価格がTraderへ届く側と、注文がExecutionされる側を分けて見ると、何が見えてくるのでしょうか。

価格が届く側と、注文が進む側を分けてみる
ここまで、MT4・MT5に表示されるBid / Askを逆向きにたどってきました。
Price Sourceを確認し、複数のSourceを利用する構成ではAggregationが入ることもあり、QuoteはPrice FeedとしてTrader側へ配信されます。
さらにDD / NDD、STP / ECNまで見てきました。
ここで一度、集めてきたものを同じ地図の上に置いてみます。
前の章で残ったのは、
価格がTraderへ届く側と、注文がExecutionされる側を分けると何が見えるのか。
という疑問でした。
まず、価格が届く側です。
ここは、すでにたどってきた経路ですね。
Price Source → 必要に応じてAggregation → FX業者側Price Feed(Quote配信)→ MT4・MT5 → Trader
こちらで追っているのは、
「自分の画面に表示されているBid / Askは、何を基に、どのように届いているのか」
という問いです。
では、今度は向きを反対にしてみます。
Trader
↓
注文
↓
FX業者
↓
Execution Route
↓
?
こちらで追うのは、
「自分が出した注文は、FX業者でどのように扱われ、どのようにExecutionされるのか」
という問いです。
並べてみると、同じ取引画面を見ていても、追っているものが違うことが分かります。
画面にBid / Askが表示されていることから分かるのは、価格がTrader側へ届いているということです。
しかし、そのPrice SourceやPrice Feedが分かったからといって、注文側のExecution Routeまで自動的に決まるわけではありません。
反対に、STPやECNといった言葉だけを見ても、Traderの画面に表示されているPriceの背景すべてが分かるわけではありません。
ここで、今まで追ってきた二つの方向がはっきり分かれます。
画面にPriceが届くことと、その注文がどのようにExecutionされるかは同じ問いではない。
この二つを一つのRouteとして考えてしまうと、価格側で確認できた情報から、注文側の経路まで推測してしまいます。
しかし、ここまでの旅で見てきたのは、その一本線ではありません。
価格側には価格側の経路があり、注文側には注文側で確認すべき経路があります。
だからこそ、DD / NDD / STP / ECNというラベルを見るだけではなく、実際にどのようなRouteになっているのかを見る必要が出てきます。
ここまでで、MT4・MT5へ届くPriceと、Traderが出した注文を、同じ一本線として考えないための地図ができました。
最後に、ここまで見つけたRouteを整理して、答えをまとめておきます。

まとめ――ラベルではなくRouteを見る
MT4・MT5に表示されているBid / Askは、どこから来ているのか。
その疑問から始まり、ここまで価格の経路を逆向きにたどってきました。
見えてきたのは、DD / NDD / STP / ECNというラベルだけでは、取引環境の全体像までは分からないということです。
確認したいのは、その内側にある具体的な構成です。
- Price Source:顧客向けQuoteが何を基に提示されているのか
- Liquidity Source:Execution側では、どこへ接続しているのか
- Aggregation:複数SourceのQuoteをどのように扱っているのか
- Price Feed:QuoteがどのようにTrader側へ配信されるのか
- Execution Route:Traderが出した注文が、どのような経路でExecutionされるのか
これらは、すべて同じ一つのRouteを別の名前で呼んでいるわけではありません。
どこからPriceを得ているのか。
どのようにTraderへ届けているのか。
そして、注文はどのようにExecutionされるのか。
それぞれを分けて見ることで、DD / NDD / STP / ECNというラベルの奥にある構成が少しずつ見えてきます。
見るべきなのはラベルそのものではなく、Priceが届く側と注文が進む側の具体的なRouteです。
ここで、最初のMT4・MT5へ戻ってみます。
たとえば、USD/JPYの画面に、
150.100
というPriceが見えています。
そのPriceが何を基に、どのように画面まで届くのかを追ってきました。
しかし、ここまで見てきたように、Priceが届くことと、注文がExecutionされることは同じ問いではありません。
では――
画面に150.100というPriceが見えているなら、注文も本当に150.100で約定するのでしょうか。
PriceのRouteをたどった先で、今度はExecutionそのものが新しい疑問として残りました。

次回|FX市場の裏側・第07話
今回たどってきたのは、MT4・MT5に表示されるPriceがどこから来て、どのようにTraderの画面まで届くのかというRouteでした。
そして最後に見えてきたのは、Priceが届くことと、注文がExecutionされることは同じ問いではないということです。
画面には、たしかに150.100というPriceが見えています。
では、その注文は本当に150.100で約定するのでしょうか。
次回は視点を注文側へ移し、表示されているPriceと実際の約定結果の間で何が起きているのかを追っていきます。
主要資料・出典
本記事の作成にあたり、FX市場の取引構造、Price Source、Aggregation、STP / ECN、Retail FXにおける価格提示・Executionの仕組みについて、以下の資料を参考にしました。
主要資料
Bank for International Settlements(BIS)|The FX trade execution landscape through the prism of the 2025 BIS Triennial Survey
Spot FX市場が複数のLiquidity ProviderやTrading Venueに分散していること、電子取引・Liquidity Aggregationを含むFX市場の取引構造を確認するために参照。
https://www.bis.org/publications/fx-trade-execution-landscape-through-prism-2025-bis-triennial-survey
Bank for International Settlements(BIS)|The anatomy of the global FX market through the lens of the 2013 Triennial Survey
複数のLiquidity ProviderからPrice Streamを受け取る構造や、Liquidity Aggregatorによって複数のVenue / ProviderへのAccessをまとめる仕組みを確認するために参照。
https://www.bis.org/publications/anatomy-global-fx-market-through-lens-2013-triennial-survey
Bank for International Settlements(BIS)|FX trade execution: complex and highly fragmented
FX市場が単一の取引所や一つのLiquidity Poolに集約されず、複数のVenueへ分散している構造を確認するために参照。
https://www.bis.org/publications/fx-trade-execution-complex-and-highly-fragmented
European Securities and Markets Authority(ESMA)|Questions and Answers relating to the provision of CFDs and other speculative products to retail investors under MiFID
顧客向けPriceをどのSourceから導出するのか、Price SourceとExecution Venue / Hedge先をどのように整理するのかを確認するために参照。
https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/library/esma35-36-794_qa_on_cfds_and_other_speculative_products_mifid.pdf
National Futures Association(NFA)|Compliance Rule 2-36
Retail Forex Dealer MemberにおけるStraight Through Processing(STP)の定義と、注文処理・Counterpartyとの関係を確認するために参照。
https://www.nfa.futures.org/rulebooksql/rules.aspx?RuleID=RULE+2-36&Section=4
National Futures Association(NFA)|Forex Dealer Member Promotional Material Guidance
STPを利用している場合でも、顧客がInterbank Marketへ直接Accessしているかのように表示することはできない点を確認するために参照。
https://www.nfa.futures.org/rulebooksql/rules.aspx?RuleiD=9053&Section=9
U.S. Commodity Futures Trading Commission(CFTC)|CFTC Orders Forex Capital Markets, LLC(FXCM)ほかに対するEnforcement Action(2017)
「No Dealing Desk」という名称だけでは、実際のCounterparty関係やExecution構造まで判断できないことを示す公的事例として参照。
https://www.cftc.gov/PressRoom/PressReleases/7528-17
Global Foreign Exchange Committee(GFXC)|FX Global Code
Aggregation ServiceのOperationやRouting Preferenceなどが構成によって異なり得ることを確認するために参照。
https://www.globalfxc.org/fx-global-code/
実務上の参考資料
MetaQuotes|MetaTrader 4 Help「Export of Quotes」
MT4で使用されるQuoteがBrokerage Companyから提供され、Server接続を通じてTerminalへ届く仕組みを確認するために参照。
https://www.metatrader4.com/en/trading-platform/help/service/dde
MetaQuotes|MetaTrader 5 Help「Market Watch」
MT5のMarket Watchに表示されるBid / Askと、Broker側のTrading ServerからTerminalへQuoteが届く仕組みを確認するために参照。
https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/trading/market_watch
MetaQuotes|MetaTrader 5 Help「Price Data」
MT5におけるPrice / Tick DataとBroker Serverとの関係を確認するために参照。
https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/trading_advanced/price_data
※STPについては、NFAルールにおけるRetail Forex Dealer Member向けの定義を参照しています。この定義を世界中のすべてのFX業者へそのまま一般化するものではありません。
※本記事では、Price Sourceを「価格の供給元」、Price Feedを「価格配信」として区別していますが、Price Feedという言葉がRetail FX全体で単一の法的定義に統一されているという意味ではありません。
※DD / NDD / STP / ECNなどの名称だけから、個々のFX業者のPrice Source、Liquidity Source、Aggregation、Price Feed、Execution Routeを一律に判断することはできません。実際の構成はFX業者や取引環境によって異なります。







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