FX市場の裏側|第05話
価格を動かす仕組みは分かった。では、その中身を私たちは見ることができるのか?
第04話では、FXの価格を動かしているものを追いました。
そこで見えてきたのが、Order FlowとLiquidityです。
大きな注文だから必ず価格が動くわけではない。
その瞬間、その価格帯にどれだけのLiquidityが存在し、そこへどのようなOrder Flowがぶつかったのか。
それによってMarket Impactは変わります。
ならば、次に知りたくなることがあります。
そのLiquidityとOrder Flowを直接見ればいいのでは?
どこに大量の買いがあるのか。
どこに大量の売りがあるのか。
どの価格帯にLiquidityが集中しているのか。
株式市場には板があります。
先物市場にもOrder Bookがあります。
そしてMT5には、DOM(Depth of Market)があります。
一見すると、FXでも市場の中身を覗けそうです。
ところが、第03話で見たFX市場の構造を思い出すと、一つ矛盾が生まれます。
FXには、世界中の注文を集める一つの中央取引所がありません。
それなのに…
その「板」は、一体どこの注文を映しているのでしょうか?
第05話では、DOM、Order Book、出来高、Tick Volume、CME通貨先物、Footprintなどを手掛かりに、個人トレーダーからFX市場がどこまで見えるのかを追っていきます。
初めてこのシリーズを読む方へ
この旅の出発点は、第01話「あなたの1Lotはどこへ行く?」です。
第01話から順番に読むと、注文を追って市場の奥へ進み、価格形成、Order Flow、そして今回の「市場をどこまで観測できるのか」という疑問まで一本につながります。
そもそも「板」とは何を見ているのか?
「FXに板があるのか」を考える前に、そもそも私たちが「板」と呼んでいるものが何なのかを整理しておきましょう。
板を見ると、一般的には価格ごとにBidとAsk、その価格で取引可能な数量などが並んでいます。
イメージとしては、次のようなものです。
ASK
150.105 20
150.104 15
150.103 8
150.102 5
----------------
150.101 7
150.100 12
150.099 18
BID
実際の表示方法は市場やプラットフォームによって異なりますが、本質的に見ているのは、
「この取引場所では、現在どの価格帯にどれくらいの売買可能なLiquidityが提示されているのか」
という情報です。
Best BidとBest Ask
買い側で最も高い価格がBest Bid。
売り側で最も安い価格がBest Askです。
例えば、
Best Bid:150.100
Best Ask:150.102
なら、その差である0.002円が、この例におけるBid/Ask Spreadになります。
そしてBest BidやBest Askのさらに外側にも、複数の価格帯でLiquidityが提示されている場合があります。
その「深さ」を見るものが、Market Depthです。
板に並ぶ注文は「待っているLiquidity」
第4話では、相手の提示価格を積極的に取りに行く注文と、その相手になるLiquidityについて説明しました。
ここで両者がつながります。
例えば150.102に売りのLiquidityが5存在するとします。
そこへ、それを上回るAggressive Buyが入れば、150.102だけでは注文を吸収できません。
残った注文は、条件や市場構造によって次のAskへ向かいます。
150.103。
さらに足りなければ150.104。
このようにMarket Depthを見れば、
「現在の価格の向こう側に、どの程度のLiquidityが見えているのか」
を知る手掛かりになります。
だからこそ、Order Flowを理解しようとするトレーダーにとって板は魅力的なのです。
Order BookとOrder Flowは同じものではない
ここで、最初の誤解を取り除いておきましょう。
Order BookとOrder Flowは同じものではありません。
Order Bookは、ある時点で観測できる注文やLiquidityの状態を示します。
しかし市場では、常に変化が起きています。
・新しい注文が追加される
・既存注文がキャンセルされる
・数量が変更される
・Aggressive OrderによってLiquidityが消費される
・Quoteそのものが変更される
つまりOrder Bookは、市場の動きを一瞬切り取った「状態」に近いものです。
一方でOrder Flowという言葉は、実際に市場へ流れ込んでくる注文や取引の方向性・変化など、より動的な概念として使われます。
したがって、
板が見える=Order Flowのすべてが見える
というわけではありません。
この違いは、この先かなり重要になります。
株や先物の「板」とFXの「板」は同じなのか?
ここからFX特有の問題に入ります。
株式や取引所先物では、特定の取引所という明確な取引場所があります。
単純化すると、
Trader A ─┐
Trader B ─┤
Trader C ─┼→ Exchange → Order Book
Trader D ─┤
Trader E ─┘
その取引所に出された注文を、取引所のOrder Bookとして集約できます。
もちろん、これも「地球上に存在するすべての売買意思」を表しているわけではありません。
別の取引場所が存在する場合もありますし、すべての流動性が必ず同じ形で表示されるわけでもありません。
それでも、「どの取引場所のOrder Bookなのか」は比較的明確です。
では、Spot FXはどうでしょうか?
FXには「巨大な一つの取引所」がない
第3話で詳しく追ったように、Spot FXは基本的にOTC(Over The Counter)市場です。
世界のどこかに、
GLOBAL FX EXCHANGE
という一つの巨大取引所があり、世界中の銀行、ヘッジファンド、FX業者、企業、個人投資家のUSD/JPY注文がすべてそこへ集められているわけではありません。
実際には、
・銀行
・Non-Bank LP
・ECN
・Electronic Venue
・Prime Broker
・Prime of Prime
・FX業者
・機関投資家
・その他の市場参加者
などが複雑なネットワークを形成しています。
その結果、Liquidityも一か所だけに存在しているわけではありません。
Venue AにはVenue Aから見えるLiquidity。
Venue BにはVenue Bから見えるLiquidity。
Broker AにはBroker Aが利用している価格・Liquidity。
Broker BにはBroker Bの環境があります。
ここで問題が起こります。
では、「USD/JPYの板を全部見せてください」と言われたら、誰が世界中の注文を集めるのでしょうか?
その役割を担う単一の中央取引所が、Spot FXにはありません。
これが、「FXの本物の板」という言葉を難しくしている最大の理由です。

「本物の板がない」という言い方も正確ではない
ここは非常に重要です。
FXには世界共通の板がない。
だからといって、「FXの板は全部偽物」と考えるのも間違いです。
例えば、あるECNやVenueに実際にLiquidityが提示されており、そのDepthが表示されているのであれば、それはその取引場所についての実データです。
あるFX業者が、自社顧客の注文情報を集計してOrder Bookとして公開しているのであれば、そのデータが実際の顧客注文に基づく限り、それも実データです。
問題は、そのデータが「どこまでの市場を表しているのか」です。
ここは、Real Dataと、Entire FX Marketを分けて考える必要があります。
Real Data ≠ Entire Market
実際のデータであることと、FX市場全体を表していることは別問題なのです。

MT4・MT5のDOMには何が見えている?
ここで、個人トレーダーにとって身近な取引プラットフォームへ戻りましょう。
MT5にはDepth of Market(DOM)を表示する機能があります。
価格帯ごとにBid/Askや数量が表示されるため、初めて見ると、
「これがFX市場全体の板なのか!」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、ここまで読んできたなら違和感があるはずです。
FXには中央取引所がありません。
ではMT5は、どこから世界中の注文を集めているのでしょうか?
答えは、
MT5そのものが世界中のFX注文を集めているわけではありません!
です。
MT4・MT5は「FX市場」ではない
これは当たり前のようで、非常に重要です。
MT4やMT5はTrading Platformです。
つまり、トレーダーが価格を確認したり、チャートを表示したり、注文を出したりするためのソフトウェアです。
MT5そのものがインターバンク市場というわけではありません。
そのため、
GLOBAL FX MARKET
↓
Liquidity Sources / Venues
↓
Broker
↓
MT5
↓
Trader
というように、その背後にある取引環境を考える必要があります。
実際の構成は業者によって異なりますが、大切なのは、
画面にDOMが表示されていることと、世界中のFX Market Depthが見えていることは同義ではない
という点です。
「そのDOMはどこから来た?」と考える
DOMを見るときに本当に重要なのは、表示された数字だけではありません。
むしろ最初に考えるべきなのは、
このデータはどこから来たのか?
です。
Brokerがどのような価格・Liquidity Sourceを利用しているのか。
どのSymbolについて、どのようなDepth情報が提供されているのか。
どの取引環境を反映しているのか。
ここが違えば、同じUSD/JPYという名前でも、すべてのトレーダーが完全に同じDepthを見ているとは限りません。
そして、この疑問は後ほど非常に重要な意味を持つことになります。

FX業者が公開するOrder Bookは「本物」なのか?
FX関連サービスを見ていると、「Order Book」という名称のデータを見かけることがあります。
・価格帯ごとの注文
・Long / Short比率
・未決済ポジション
・StopやLimitの分布
こうした情報を見ると、「ついに市場参加者の注文が全部見えた」と思いたくなります。
しかし、ここでも同じ質問をする必要があります。
誰のデータなのか?
「その業者の顧客データ」なら、それは本物ではないのか?
例えば、あるFX業者が100万人の顧客を抱えていたとします。
その顧客の注文を集計して、
「この価格帯にLimitが多い」
「この価格帯にStopが集中している」
という情報を公開したとします。
その集計が正確なら、データ自体を「偽物」と呼ぶ理由はありません。
しかし、それは、その業者から観測できる顧客データです。
世界中の銀行。
世界中のヘッジファンド。
世界中の企業。
他社FX業者の顧客。
他VenueのLiquidity。
それらがすべて含まれているわけではありません。
したがって、
本物か偽物かではなく、「観測範囲はどこまでか?」を見る。
この考え方が重要です。
「Order Book」という名前でも中身は同じとは限らない
もう一つ注意したいのが、Order Bookという言葉の使われ方です。
サービスによっては、
・Pending Order
・Open Position
・Long / Short Ratio
・Stop / Limitの分布
・特定価格帯の注文量
など、異なる情報が表示される場合があります。
つまり、
「Order Bookと書いてあるから全部同じデータ」
ではありません。
何を集計しているのか。
対象は誰なのか。
注文なのか、ポジションなのか。
どの範囲の顧客なのか。
データを見る前に、その定義を確認する必要があります。
では、FXの「出来高」は見えるのか?
Order Bookの次に気になるのがVolumeです。
チャート分析をしている人なら、一度は「出来高」という言葉を見たことがあるでしょう。
株式や先物では、取引所で成立した取引量をVolumeとして集計できます。
ではSpot FXはどうでしょうか。
ここでも、中央取引所が存在しないという問題が出てきます。
Spot FX全体の「総出来高」を一枚にする難しさ
世界中のSpot FX取引が一つの取引所で約定しているのであれば、そこで成立したVolumeを集計できます。
しかしFXは分散したOTC市場です。
Bank AとBank Bの取引。
Venue Aでの取引。
別のVenueでの取引。
FX業者内部で処理された顧客取引。
さまざまな取引が存在します。
そのため、個人トレーダーが通常の取引画面から、
「今この瞬間、世界中のSpot USD/JPYで合計何Lot取引されたのか?」
という完全な数字を見ることはできません。
ここでも、
市場全体
と、
観測可能な一部分
を分けて考える必要があります。
MT4・MT5のTick Volumeとは何なのか?
MT4やMT5でVolumeを表示すると、棒グラフが出てきます。
これを見て、
「このローソク足では○Lot取引された」
と思っている人もいるかもしれません。
しかし、Spot FXで一般的に表示されるTick Volumeは、取引されたLot数そのものを意味するものではありません。
簡単に言えば、
一定期間に価格更新がどの程度発生したか?
を見るデータです。
例えば1分足の中で価格更新が活発に起きれば、Tick Volumeも増えます。
逆に価格更新が少なければ、小さくなります。
Tick Volumeは「偽物の出来高」なのか?
ここでも、本物・偽物の二択にしない方が理解しやすくなります。
Tick Volumeは、
実取引数量そのものではありません。
これは明確に区別する必要があります。
しかし、
実Volumeではない=何の意味もない
とも限りません。
市場活動が活発な時間帯ではQuote更新も活発になりやすく、Tick Activityから市場の活発さを観測する用途は考えられます。
重要なのは、
そのデータが何を測っているのかを理解したうえで使うこと。
です。
Tick VolumeをReal Volumeだと思って使うのと、
Tick Activityを示すデータだと理解して使うのでは、意味がまったく違います。

「本物の出来高」を見るならCME通貨先物?
ここまで来ると、詳しいトレーダーなら別の疑問を持つかもしれません。
「Spot FXでVolumeが分からないなら、CMEの通貨先物を見ればいいのでは?」
これは非常に興味深い視点です。
CMEの通貨先物は、取引所で取引される商品です。
したがって、その取引所で成立した取引についてVolumeが存在します。
Order BookやMarket Depthも扱えます。
Spot FXとは違い、
「この取引所で実際にどれだけ取引されたか」
というデータを観測できます。
そのため、Spot FXを取引するトレーダーの中にも、通貨先物のVolumeやOrder Flowを参考にする人がいます。
しかし、ここでも一つ注意が必要です。
CME通貨先物=Spot FX全体ではない
CMEの通貨先物市場とSpot FXは密接に関連しています。
しかし、同じ市場ではありません。
したがって、
CME通貨先物のOrder Book=世界中のSpot FXのOrder Book
ではありません。
CMEで観測しているのは、あくまでその取引所における先物市場の注文・取引です。
だからといって役に立たないという意味ではありません。
むしろ、
中央取引所で実際のVolumeやOrder Bookを観測できる、有力な「窓」の一つ
と考える方が適切です。
ここでも「全部見える/何も見えない」という二択ではありません。

Order Flow分析は、FXでは意味がないのか?
ここまで読んで、
「結局FX市場全体が見えないなら、Order Flow分析なんて意味がないのでは?」
と思ったかもしれません。
しかし、これも少し極端です。
完全な市場全体を見ることができないことと、何も観測できないことは同じではありません。
個人トレーダーにも、さまざまな観測手段があります。
例えば、
・Broker DOM
・Broker Order Book
・特定VenueのMarket Depth
・Tick Volume
・Futures Volume
・Futures Order Book
・Footprint
・Price
・Bid / Ask
・Spread
・Quoteの変化
などです。
それぞれが同じものを見ているわけではありません。
むしろ重要なのは、
「どのデータが正しいか?」だけではなく、「そのデータは市場のどこを見ているのか?」
と考えることです。
FX市場を「複数の窓」から見る
巨大な建物を想像してみてください。
建物全体を一度に透視することはできません。
しかし、いくつかの窓があります。
・一つの窓からは、銀行間市場の一部分が見える。
・別の窓からは、FX業者の顧客注文が見える。
・別の窓からは、CME通貨先物が見える。
・Tick Volumeという窓からは、価格更新活動が見える。
・チャートからは、最終的に市場へ現れた価格変化が見える。
GLOBAL FX MARKET
┌──────────┼──────────┐
│ │ │
BANK VENUE LP
│ │ │
└──────┬───┴────┬─────┘
│ │
BROKER FUTURES
│ │
─────────────────────
私たちが使える「窓」
─────────────────────
DOM
Order Book
Tick Volume
Futures Volume
Footprint
Price / Quote
どの窓も市場全体ではありません。
しかし、それぞれ違う情報を持っています。
FX市場全体は見えない。
しかし、市場の一部分を観測する窓は存在する。
これが重要です。
FootprintやVolume ProfileならOrder Flowが見える?
近年は、Footprint ChartやVolume Profileなどを使うトレーダーも増えています。
見た目も非常に高度です。
さまざまな数字が表示されます。
すると、
「普通のチャートより高度だから、市場の裏側まで全部見えている」
ように感じるかもしれません。
しかし、どれほど高度な表示でも、その根本にはData Sourceがあります。
Footprint Chartとは?
Footprintは、一般的なローソク足よりも細かく、価格帯ごとの取引活動などを可視化するために使われるチャート表現です。
利用するデータによっては、
などを見ることができます。
Order Flowを視覚的に理解するうえで非常に興味深いツールです。
しかし、
Footprintという表示形式そのものが、世界中のFX注文を収集してくれるわけではありません。
何のデータをFootprint化しているのか。
ここが重要です。
Volume Profileも同じ
Volume Profileでは、時間ではなく価格帯を基準としてVolumeの分布を見ることができます。
どの価格帯で取引活動が集中したのか。
どこが比較的薄かったのか。
こうした分析に使われます。
しかしSpot FXで利用する場合には、
そのVolumeの元データは何なのか?
を確認する必要があります。
Broker由来のTick Dataなのか?
Futures Dataなのか?
別のFeedなのか?
表示が高度になるほど、元データの意味を忘れやすくなります。
覚えておきたいのは、
分析ツールの見た目が高度になっても、元データが観測している市場範囲まで自動的に広がるわけではない。
ということです。
「見えている注文」を信じすぎてはいけない
さらに一段深く進みます。
仮にMarket Depthが見えていたとしても、
「そこに表示されたLiquidityが、そのまま未来の値動きを決める」
とは限りません。
なぜなら、注文やQuoteは変化するからです。
板にあった注文は消えることがある
例えば150.000に大量の買いLiquidityが見えていたとします。
すると、
「150円には巨大な買い板がある。ここは絶対に割れない」
と考えたくなります。
しかし、その注文が約定前にキャンセルされればどうでしょうか。
数量が減らされたら?
Quoteが引かれたら?
あるいは、それ以上のAggressive Sellが流れ込んだら?
板に見えていたLiquidityは、
あくまで、その時点で観測できた市場状態です。
見えていないLiquidityも存在する
逆方向の問題もあります。
画面に見えているLiquidityが、市場に存在するLiquidityのすべてとは限りません。
市場構造によっては、表示されていないLiquidityや、特定参加者からしかアクセスできないLiquidityが存在する場合があります。
さらにFXでは、Liquidityそのものが複数Venueや複数の取引関係に分散しています。
つまり、
見えている板が薄い=世界中にLiquidityが存在しない
とも限りません。
板に見えない「注文」とフロー
ここで、日本のFXニュースや市況コメントをよく見る人には馴染みのある言葉を考えてみましょう。
例えば、
「USD/JPY 150.00に大口オプション、NYカット」
あるいは、
「150円にバリア観測」
といった情報です。
こうした情報を見て、
「150円に巨大な売り注文や買い注文が板として置かれているのか」
と想像している人もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそういう意味ではありません。
「大口オプション」 = 巨大な指値注文ではない
FX Optionには、Strike(権利行使価格)があります。
そして期限を迎えるOptionもあります。
市場では、特定Strikeに大きなOption Interestが存在することが注目される場合があります。
日本のFX関連情報でよく目にするNYカットも、そのOption Expiryに関連する言葉です。
ただし、
150.00に大口Optionがある = Spot FXの150.00に巨大なLimit Orderが置かれている
ではありません。
これは非常に重要な違いです。
それでもSpot FXと無関係ではない
では、なぜ為替トレーダーがOptionを気にするのでしょうか。
Optionを保有したり提供したりしている市場参加者は、リスク管理のためにSpot FXなどでHedgeを行うことがあります。
非常に単純化すると、
OPTION POSITION
↓
RISK / HEDGING
↓
SPOT FX ORDER FLOW
↓
PRICE
という関係が生じる可能性があります。
だからOption市場の存在がSpot FXとまったく無関係というわけではありません。
しかし、
どのOptionが、どのようなHedge Flowを生み、それがSpotへどう影響するのか
まで理解しようとすると、話は一気に深くなります。
ここから先だけで、一本の記事が作れるほどです。
そのため、この第5話では深追いしません。
ただ、一つだけ覚えておいてください。
FX市場には、あなたのDOMにそのまま並んで見える注文だけでなく、別市場のPositionやHedgingを起点として生まれるFlowもある。
「NYカットだから必ずその価格へ向かう」
「大口オプションがあるから絶対に反発する」
という単純な法則ではありません。
この話は、全10話を終えた後に改めて深く潜る価値があります。

Stop Orderは世界共通の板に全部見えているのか?
もう一つ馴染みのある例があります。
「150円の下にStopが大量にあるらしい」
という市場コメントです。
第4話では、Stopが発動すると新しいOrder Flowを生み、値動きを加速させる場合があることを説明しました。
では、そのStopは世界中のトレーダーから見えているのでしょうか。
当然ながら、Spot FX市場全体のStop注文が一枚の世界共通DOMに一覧表示されているわけではありません。
FX業者は自社顧客から受けた注文を把握できます。
金融機関が顧客から注文を預かっている場合もあります。
一方、市場参加者が価格行動や市場情報などから注文集中を推測している場合もあります。
つまり、
「Stopがあると言われている」ことと、「世界共通の板でStop数量を直接確認した」ことは別です。
ここでも、情報源と観測範囲を区別する必要があります。
板は「未来予知装置」ではない
ここまでの内容をまとめると、Order BookやDOMを見るときの最大の注意点が見えてきます。
板は便利です。
・Liquidityの状態を見ることができます
・価格帯ごとの厚みを見ることもできます
・市場参加者の行動を考える材料にもなります
しかし、
板 = 未来の価格を教えてくれる装置
ではありません。
大量Bidが見えている = だから必ず反発する。
大量Askが見えている = だから絶対に上がらない。
そう単純ではありません。
・注文は変更されます
・キャンセルされます
・新しいOrder Flowが入ります
・別Venueでは違うLiquidityが存在します
・Quoteそのものが変わることもあります
したがって、
板は未来ではなく、「現在観測できているLiquidityの一部」を見るもの。
この距離感が大切です。
結局、個人トレーダーは何を見ているのか?
ここまで長い道のりでした。
一度整理しましょう。
FXトレーダーが利用できる情報には、さまざまなものがあります。
| データ | 主に何を観測するものか | 注意点 |
| DOM / Market Depth | 特定環境の価格帯別Liquidity | FX市場全体とは限らない |
| Broker Order Book | 業者が取得・集計した注文等 | 対象顧客・定義を確認 |
| Tick Volume | 価格更新活動 | 実取引Lot数ではない |
| Futures Volume | 取引所先物の実取引量 | Spot FX全体ではない |
| Futures Order Book | 特定取引所のDepth | Spot市場とは別市場 |
| Footprint | 元データを詳細に可視化 | Data Sourceが重要 |
| Volume Profile | 元Volumeの定義を確認 | 元Volumeの定義を確認 |
| Price / Quote | 価格帯別の活動分布 | 提供元・取引環境を意識する |
どれか一つだけが「真実」で、それ以外が「偽物」という話ではありません。
それぞれが、巨大なFX市場を見るための違う窓なのです。
第5話の答え – FXに「本物の板」はあるのか?
ようやく最初の疑問へ戻れます。
FXに本物の板はある?
答えは、少し条件付きです。
特定Venueや特定取引環境における、本物のOrder BookやMarket Depthは存在します。
しかし、
世界中のSpot FX注文をすべて集約した「FX市場全体の一枚の板」は存在しません。
この二つを同時に理解することが重要です。
FX市場は巨大です。
しかし、その巨大さゆえに、私たちは市場全体を一枚の画面で透視することはできません。
見えるのは一部分。
・DOMという窓
・Broker Order Bookという窓
・CME Futuresという窓
・Tick Volumeという窓
・Footprintという窓
・そしてPriceそのものという窓
だから、FXでOrder FlowやLiquidityを考えるときは、
「何が見えているか」だけでなく、「何が見えていないか」まで考える。
それが重要になります。

そして最大の疑問 – あなたが見ている「価格」は誰の価格なのか?
ここまで「FX市場をどこまで見ることができるのか」を追ってきました。
どれも市場を見るための手掛かりになります。
しかし、今回たどり着いた答えは、
「全部見える」でも「何も見えない」でもありませんでした。
特定VenueのOrder Bookなら、そのVenueの市場を見ることができる。
FX業者のOrder Bookなら、その業者が持つデータを見ることができる。
CME通貨先物なら、取引所で実際に成立したVolumeを見ることができる。
つまり私たちは、巨大なFX市場をいくつもの「窓」から部分的に観測しているわけです。
そして、ここで別の疑問が生まれます。
あなたは毎日MT4やMT5を開けば、当たり前のようにUSD/JPYの価格を見ることができます。
Bidがある!
Askがある!
Spreadがある!
業者によってはDOMまで表示される!
でも…
その価格は、どこからあなたの取引画面までやって来たのでしょうか?
さらにBUYやSELLを押した瞬間、
その注文は誰が受け取り、どの経路で処理されているのでしょうか?
次回|FX市場の裏側・第06話

FX業者の説明には、
という言葉が並びます。
そして、ときには、「インターバンク直結」という言葉まで登場します。
第03話で見たように、インターバンク市場は一つの巨大取引所ではありません。
第05話では、世界共通の一枚のFX板も存在しないことが分かりました。
それなら…
「インターバンク直結」って、何と何が直結している?
次回は、ここまで市場側から見てきた知識を持って、もう一度FX業者側へ戻ります。
【FX市場の裏側|第06話】
NDDなら、注文は必ず外へ出るのか?
STPなら、そのまま市場へ流れるのか?
ECNなら、世界中のLiquidityへアクセスできるのか?
今度は、FX業者が当たり前のように使っている言葉を、実際の市場構造と注文経路から読み解いていきます。







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