【FX市場の裏側|第03話】インターバンク市場とは?FXの価格は誰が、どこで決めているのか?

FX市場の裏側|第03話

注文を追う旅は、ついにインターバンクへ。

第01話では、あなたの1LotがFX業者の内部でどう扱われるのかを追いました。

第02話では、さらにその外へ進み、カバー取引からLP・Aggregator・Prime Brokerへと経路をたどり、ついに「インターバンク市場」という場所へ到達しました。

ところが、ここで少し妙なことが起こります。

私たちは当たり前のように、

「インターバンクへ流れる」
「インターバンクレート」
「インターバンク直結」

という言葉を使います。

しかし…

そもそもインターバンク市場とは、どこにあるのでしょうか?

そして、世界共通の巨大なFX取引所が存在しないのだとしたら、

私たちが毎日見ているUSD/JPYの価格は、誰が、どこで決めているのでしょうか?

第03話では、注文の行方を追う手をいったん止めます。

今度は、その注文がたどり着いた「市場そのもの」を見てみましょう。

初めてこのシリーズを読む方へ

この物語は、第01話「あなたの1Lotはどこへ行く?」から始まっています。

第01話から順番に読むと、一つの注文を追いかけながら、FX業者の内部からインターバンクまで市場の構造がつながっていきます。

目次

世界共通のFX取引所がないのに、なぜ「現在価格」がある?

前の記事では、私たちがFX業者へ出した注文の「その先」を追いかけました。

トレーダーが注文する。

FX業者がその注文を受ける。

顧客フローを内部化・ネッティングし、必要に応じて外部へカバーする。

その先にはLP(Liquidity Provider)があり、Prime BrokerやPrime of
Primeといった信用・取引の仕組みがあり、さらに銀行やその他の大規模な市場参加者が存在する。

そして最後にたどり着いたのが、

インターバンク市場

という言葉でした。

ところが、そこで一つ奇妙なことに気づきます。

株式なら東京証券取引所のような取引所があります。

そこに注文が集まり、売りたい人と買いたい人がぶつかり、価格が形成される。

非常にイメージしやすい構造です。

ではFXはどうでしょうか。

世界中のUSD/JPY注文が集まる「世界外国為替取引所」のような場所はありません。

世界共通の一枚の板があるわけでもありません。

それなのに私たちは、

「現在のドル円は150円20銭」

と、まるで世界に一つだけの価格が存在するかのように話しています。

MT4やMT5を開けば価格が表示されます。

TradingViewやニュースサイトを見ても価格があります。

銀行にもFX業者にもレートがあります。

では、その数字はいったい誰が決めているのでしょうか。

日本銀行でしょうか。

大手銀行でしょうか。

FX業者でしょうか。

LPでしょうか。

あるいは「インターバンク市場」という見えない巨大な存在が、世界共通価格を決めているのでしょうか。

今回の記事では、この疑問を追いかけます。

ただし最初に結論を少しだけ言ってしまうと、

FXの価格を一人の誰かが決めているわけではありません。

では、誰も決めていないのに、なぜ価格が生まれるのか。

ここからが面白いところです。

そもそも「インターバンク市場」とは何なのか?

「インターバンク」という名前が作る巨大取引所のイメージ

インターバンク市場。

この言葉だけを聞くと、

世界中の大手銀行が参加する巨大な市場があり、その中央に注文が集まり、そこで為替レートが決まっている。

そんなイメージを持つかもしれません。

しかし、第2記事でも触れた通り、FXの中心市場はOTC(Over The Counter)です。

株式市場のように、すべての注文を一つの中央取引所へ集めなければならない構造ではありません。

銀行Aと銀行Bが取引する。

銀行Aとノンバンク系マーケットメーカーが取引する。

銀行Bが電子取引Venueで価格を提示する。

別の市場参加者がPrime Brokerの信用枠を使って取引する。

こうした取引関係が世界中に広がっています。

つまり、

インターバンク市場=一つの場所

ではありません。

インターバンク市場は「市場参加者同士のネットワーク」に近い

理解しやすくするなら、インターバンク市場は巨大なネットワークと考える方が近いでしょう。

そこには、

  • 大手銀行
  • その他の金融機関
  • ノンバンク系マーケットメーカー
  • 電子的な取引Venue
  • Prime Brokerageを利用する市場参加者
  • 機関投資家などの大口参加者

が存在します。

ただし、全員が全員と同じ条件で取引しているわけではありません。

誰と取引できるか。

どの価格が見えるか。

どれだけの数量を取引できるか。

どのVenueへアクセスできるか。

これらは市場参加者によって異なります。

ここがFX市場を理解するうえで非常に重要です。

「市場に参加している全員が、同じ一枚の板を見ているわけではない」

のです。

「インターバンクレート」という言葉にも注意が必要

FX業者の説明などで、

「インターバンクレート」

という言葉を見ることがあります。

この言葉から、

世界共通の正式なインターバンク価格が一つ存在する

ように感じるかもしれません。

しかし実際には、銀行や流動性供給者が提示する価格は完全に同一とは限りません。

ある銀行は、

USD/JPY
150.100 / 150.102

別の銀行は、

150.101 / 150.103

別の流動性供給者は、

150.099 / 150.101

ということもあり得ます。

つまり「インターバンクレート」という言葉を使う場合でも、

どの市場参加者の、どの時点の、どの取引可能価格なのか

という視点が必要になります。

FXには「公式価格」が存在するのか?

株式の価格とFXの価格は同じ感覚で考えない方がいい

株式では、特定の取引所で最後に成立した価格を「現在値」として見ることができます。

もちろん株式でも複数市場やPTSなどがあり、現実は単純ではありません。

それでも「この取引所で成立した価格」という明確な基準を持ちやすい。

一方、FXでは中央集権的な一つの取引所がありません。

そのため、

世界中のUSD/JPYに対する唯一絶対の公式価格

というものを想定すると混乱します。

同じ瞬間でも価格は少し違っていい

例えば同じ瞬間に、

銀行A:150.100 / 150.102
銀行B:150.101 / 150.103
LP-C:150.099 / 150.102

だったとしても、それ自体は不自然ではありません。

各市場参加者は、

自分がどの価格なら買いたいか。

どの価格なら売りたいか。

どの程度の数量まで取引したいか。

自社のポジションはどうなっているか。

市場全体の状況をどう見ているか。

などを踏まえて価格を提示します。

FX市場の価格は、誰かが上から配布する「正解の数字」というより、

多数の市場参加者が提示し、実際に取引する価格の集合

として存在しています。

それでも価格が大きく離れないのはなぜ?

ここで疑問が生まれます。

自由に価格を提示できるなら、

銀行A:150円
銀行B:151円
銀行C:149円

のように、バラバラになってもよさそうです。

しかし通常はそこまで大きく離れません。

なぜでしょうか。

もし同じUSD/JPYを、

ある場所では150.00で買えて、

別の場所では150.20で売れるなら、

その価格差を利用した取引機会が生まれます。

安いところで買い、高いところで売る。

市場参加者がこうした価格差を利用しようとすれば、安い側には買いが入り、高い側には売りが入りやすくなります。

その結果、価格差は縮まりやすくなります。

これが市場間の価格を近づける重要な力の一つです。

つまり、

中央管理者が全員の価格を同じにしているのではなく、市場参加者の取引によって価格が近づいていく。

ここに市場らしさがあります。

では、銀行やLPはどうやってBid / Askを作っている?

価格は「一点」ではなくBidとAskで存在する

トレーダーがチャートを見ると、価格を一本の数字として考えがちです。

しかし実際の取引では、

Bid

Ask

があります。

Bidは市場参加者が買いたい価格。

Askは売りたい価格。

例えば、

Bid 150.100
Ask 150.102

なら、

150.100で買い手が待っている。

150.102で売り手が待っている。

その間の0.002円がスプレッドです。

FX業者の画面に表示されるスプレッドだけを見ると「業者が設定した手数料」のように感じることがあります。

しかし市場の上流でもBid / Askは存在します。

銀行は単に市場価格をコピーしているわけではない

銀行やマーケットメーカーが価格を提示するとき、

どこかにある「本当のUSD/JPY価格」をコピーしているだけではありません。

他市場の価格。

自社のポジション。

顧客フロー。

市場のボラティリティ。

取引可能な流動性。

ヘッジコスト。

相手方との関係。

さまざまな要素を考慮しながら、自分たちが取引可能なBid /
Askを提示します。

ここで重要なのは、

価格を提示するということは、その価格で取引する意思を示すことでもある

という点です。

単なる参考数字ではありません。

少なくとも取引可能なQuoteであれば、その条件の範囲で実際の取引につながります。

同じ銀行でも相手によって価格が違うことがある

さらにFX市場では、すべての相手に必ず同じ価格を提示するとは限りません。

取引関係。

取引量。

信用条件。

フローの性質。

その他の条件によって、提示される価格や流動性が異なることがあります。

このような相対的な価格提示があることも、

「世界共通の一枚の板」

というイメージでは説明しにくい部分です。

FX価格を理解する鍵 – Liquidityとは何か?

「流動性が高い」とは単に取引量が多いことではない

FXの記事では、

「ドル円は流動性が高い」

「マイナー通貨は流動性が低い」

という表現がよく使われます。

では流動性とは何でしょうか。

単純に言えば、

大きな取引をしても価格を大きく動かさずに売買しやすい状態

と考えると分かりやすいでしょう。

例えばUSD/JPYを1Lot買いたいとします。

現在のAsk付近に十分な売り流動性があれば、その注文はほぼ現在価格の近くで吸収されます。

しかし同じ価格帯にほとんど売り手がいなければ、注文は次の価格、その次の価格へ進む必要があります。

ここで価格が動きます。

価格だけ見ても市場の状態は分からない

150.100という価格が表示されていても、

その価格で1Lotしか取引できないのか。

100Lot取引できるのか。

1,000Lot取引できるのか。

では意味がまったく違います。

つまり市場を見るとき、本当は、

Price × Quantity

で考える必要があります。

価格だけではなく、

その価格にどれだけの流動性が存在するのか。

これがMarket Depthにつながります。

Market Depthは「市場全体の板」ではない

ここでも注意があります。

FXで表示されるMarket Depthを見て、

「これが世界中のUSD/JPY注文のすべて」

と考えてはいけません。

中央取引所がない以上、そのDepthは基本的に、

そのシステムからアクセスできる流動性の範囲

です。

別のVenueには別の流動性があります。

別の銀行には別の価格があります。

別のFX業者には別のLiquidity Poolがあります。

したがって、

USD/JPYの150.100に世界全体で何Lotある?

という問いに、一枚の板を見て答えることはできません。

「何Lotなら価格が動く?」に固定の答えがない理由

第1記事から続いている疑問に、ここで少し戻ります。

自分が1Lot買ってもチャートは動かない。

では10Lotなら?

100Lotなら?

1,000Lotなら?

この疑問は非常に自然です。

しかし、ここまで読んだなら、なぜ「○○Lotなら動く」と固定値で答えられないのかが見えてきます。

同じ100Lotでも市場への影響は違う

重要なのは注文数量だけではありません。

その瞬間に、

どれだけの流動性があるか。

どの価格帯に流動性があるか。

どのVenueへ注文が出るか。

注文が一括なのか分割されるのか。

時間帯はいつか。

重要指標の前後なのか。

市場が平常なのか急変しているのか。

によって結果は変わります。

100Lotを容易に吸収できる市場環境もあれば、それより小さな注文でも価格をまたいで約定する環境もあります。

「価格を動かす」と「チャートを動かす」も分けて考える

さらに興味深いのは、

自分の注文がどこかの取引価格へ影響したこと

と、

自分が見ているFX業者のチャートが動くこと

が必ずしも一対一ではない点です。

あなたのFX業者がどの価格源を使っているのか。

どのBid / Askをチャートへ反映しているのか。

チャートがBid基準なのか。

価格配信の更新タイミングはどうなっているのか。

これらによって、画面上の動き方も変わります。

「自分の注文でチャートが動くか」という最初の疑問は、実はかなり奥深いテーマだったわけです。

Order Flow – 価格を動かしているのは「注文」なのか?

買い注文が多ければ価格は上がる?

よく、

「買いが多いから価格が上がる」

と言います。

直感的には正しそうです。

しかし、この表現も少し掘ってみる必要があります。

すべての買い注文が価格を押し上げるわけではありません。

現在価格より低いところに指値BUYを置いても、それだけで現在価格が上がるわけではありません。

価格を押し上げるには、現在提示されている売り流動性を実際に消費するような注文が重要になります。

つまり、

買い注文の数

だけではなく、

どの価格の流動性に、どの程度積極的にぶつかっているのか

を見る必要があります。

成行的な注文は既存の流動性を消費する

例えば、

150.100に10Lotの売り、

150.101に20Lot、

150.102に30Lot、

という売り流動性があるとします。

ここへ5Lotの買い注文が入れば、150.100の範囲内で吸収できます。

しかし25Lotの積極的な買いが入れば、

150.100の10Lotを消費し、

さらに150.101の流動性にも到達します。

より大きな注文なら、その先の価格帯まで消費する可能性があります。

これが、

注文が板を食う

というイメージです。

ただし、繰り返しになりますが、この「板」は世界中のFX市場すべてを表しているわけではありません。

ある流動性プールの中での例です。

価格は注文だけでなくQuoteも動く

ここがFXの価格形成を理解するときに面白いところです。

価格が変わるのは、必ずしも大口注文が既存の板をすべて食ったときだけではありません。

流動性供給者自身が、

「この価格ではもう売りたくない」

と判断すれば、Askを引き上げることがあります。

逆に、

「この価格ならもっと買いたい」

と判断してBidを上げることもあります。

つまり市場価格は、

実際に成立する取引

だけでなく、

市場参加者が提示するQuoteの変化

によっても動きます。

この視点を持つと、

「誰が価格を動かしているのか?」

という問いが単純ではないことが分かります。

ニュースが出た瞬間、なぜ価格は飛ぶのか?

大口注文が一気に入ったから、だけではない

米雇用統計。

CPI。

中央銀行の政策金利。

要人発言。

大きなニュースが出た瞬間、FX価格が一気に飛ぶことがあります。

そのとき、

「巨大な買い注文が入ったから上がった」

と説明されることがあります。

もちろん大量の注文フローは重要です。

しかし、もう一つ見逃せないことがあります。

流動性供給者がQuoteを引く、あるいは大きく変更することです。

売り手が消えれば、価格は飛びやすくなる

例えば重要指標の直前。

現在150.100付近に多数の売買Quoteがあったとします。

しかし発表された数字が市場予想から大きく外れた。

その瞬間、マーケットメーカーは、

「今の価格で売るのは危険だ」

と判断するかもしれません。

すると、それまで提示されていたAskが消えたり、より高い価格へ移動したりします。

その結果、

150.100

から、

150.120

150.150

と、価格が一気に飛んで見えることがあります。

これは単純に「150.101から150.149までのすべての注文を誰かが食べた」とは限りません。

そもそも途中の価格で取引したい流動性供給者がいなくなった

可能性もあります。

流動性が薄くなるとスプレッドも広がる

重要指標時にFX業者のスプレッドが急拡大する理由も、ここから理解できます。

上流の流動性供給者がリスクを嫌い、BidとAskを広げる。

提示数量を減らす。

Quoteを一時的に引く。

その影響がLiquidity PoolやFX業者側へ伝わる。

その結果、リテールトレーダーが見るスプレッドも広がることがあります。

つまり、

スプレッド拡大はFX業者の画面だけで突然生まれているとは限らない。

その上流の市場環境まで見る必要があります。

東京・ロンドン・ニューヨークで価格は別々なのか?

「東京市場のドル円」と「ロンドン市場のドル円」

FXニュースでは、

「東京市場でドル円が上昇」

「ロンドン市場でユーロが買われた」

「ニューヨーク市場でドル売り」

といった表現が使われます。

すると、

東京にUSD/JPY市場。

ロンドンに別のUSD/JPY市場。

ニューヨークにさらに別の市場。

が存在するように感じるかもしれません。

実際には、FXはグローバルに連続したOTC市場です。

地域ごとに参加者の活動量や中心となる金融機関、流動性が変化しながら、取引が引き継がれていきます。

時間帯によって「市場の顔」が変わる

東京時間にはアジアの金融機関や企業フローが活発になります。

ロンドン時間になると欧州勢が加わり、流動性が大きくなる。

ニューヨーク時間には米国勢が参加し、ロンドンとの重複時間帯では非常に活発になる。

つまり「市場」が別物になるというより、

同じグローバルFXネットワークの中で、活発な参加者と流動性の中心が時間とともに移動する

と考える方が分かりやすいでしょう。

このため、同じ100Lotでも時間帯によって市場への影響が違う可能性があります。

では、MT4・MT5に表示されるUSD/JPYは誰の価格?

ここまで来ると、トレーダーとして最も身近な疑問にたどり着きます。

毎日見ているMT4やMT5。

そこに表示されているUSD/JPY。

あれはいったい誰の価格なのでしょうか。

MT4そのものが価格を決めているわけではない

まず、MT4やMT5という取引プラットフォーム自体が世界のUSD/JPY価格を決めているわけではありません。

プラットフォームはFX業者から配信された価格を表示します。

つまり、

あなたが見ている価格の直接的な提供元は、口座を開設しているFX業者

です。

ではFX業者はどこから価格を作るのか。

ここで第2記事の内容がつながります。

LP。

Liquidity Aggregator。

銀行やその他の流動性源。

FX業者はこうした価格情報を利用し、自社の取引条件や価格配信ロジックを通して顧客へレートを提示します。

業者によってローソク足が微妙に違う理由

FXを長くしている人なら、

「同じUSD/JPYなのに、業者を変えたら高値・安値が微妙に違う」

経験があるかもしれません。

これは異常とは限りません。

価格源が違う。

Liquidity Poolが違う。

Bid / Askの生成方法が違う。

配信タイミングが違う。

サーバー時間が違えば日足などの区切りも違う。

こうした違いによって、チャートにも差が出ます。

特にヒゲの先端では数pips未満の差が見えることがあります。

つまり、

あなたのMT4に表示されているチャート=世界共通の唯一のFXチャート

ではありません。

「他社ではその価格を付けていない」は不正の証拠になる?

ここも慎重に考える必要があります。

業者Aでは安値150.050。

業者Bでは150.058。

だから業者Aは不正。

この情報だけでは断定できません。

価格源や流動性が違えば、ある程度の差は起こり得ます。

一方で、他の主要な価格源から極端に乖離している。

特定顧客だけ不自然な価格が提示されている。

Execution Policyと実際の挙動に大きな矛盾がある。

といった場合は、別の検証が必要です。

重要なのは、

「価格が違う=不正」でもなければ、「OTCだから何でもあり」でもない

ということです。

TradingView・ニュースサイト・Googleの為替レートは何なのか?

同じUSD/JPYなのに数字が違う理由

FX業者以外にも価格はあふれています。

TradingView。

金融ニュース。

Google検索。

銀行。

両替所。

それぞれUSD/JPYの数字があります。

しかし完全には一致しません。

なぜなら、それぞれが同じ目的の価格ではないからです。

あるサービスは特定のデータプロバイダーから価格を受け取る。

あるチャートは特定の取引先・Venueのデータを表示する。

銀行の顧客向けレートには手数料やマージンが含まれる。

両替所ならさらに別のコストが乗る。

したがって、

「USD/JPY」という名前が同じだから、数字も完全に同じでなければならない

とは限りません。

チャートを見るときは「どこのデータか」を意識する

テクニカル分析をするだけなら、通常は数銭未満の差を毎回気にする必要はありません。

しかし、

EAのバックテスト。

スキャルピング。

約定検証。

ストップロスの検証。

ブローカー間比較。

のような場面では、価格データの違いが結果へ影響することがあります。

「USD/JPYのデータ」と一括りにせず、

誰が配信したUSD/JPYなのか

を見ることが重要になります。

FXの価格は「誰が決めている?」への答え

ここまでかなり遠回りしました。

最初の疑問へ戻りましょう。

FXの価格は誰が決めているのでしょうか。

日本銀行でしょうか。

大手銀行でしょうか。

LPでしょうか。

FX業者でしょうか。

答えは、

特定の一者が決めているわけではない

です。

多数の市場参加者のQuoteと取引によって価格が形成される

銀行やマーケットメーカーはBid / Askを提示します。

投資家や企業などから注文が入ります。

市場参加者が既存の流動性を消費します。

マーケットメーカーは新しい価格を提示します。

別の市場との価格差があれば裁定的な取引が働きます。

ニュースが出れば、参加者は一斉に価格評価を変えます。

こうした動きが非常に高速で繰り返されます。

その結果として、

「今、このあたりならUSDとJPYを交換できる」

という価格帯が市場全体で形成されていきます。

だから「価格」は一点というより合意の範囲に近い

日常会話では、

「ドル円は150.20」

と一点で表現します。

しかし実際の取引では、

Bid / Askがあります。

数量によって約定価格も変わります。

取引先によってQuoteも少し違います。

その意味では、

市場価格とは、世界のどこかに刻まれた絶対的な一点ではなく、多数の参加者の取引によって絶えず更新される価格帯

と考えた方が実態に近づきます。

では、中央銀行はFX価格を決められないのか?

ここで日本のトレーダーなら気になる存在があります。

日本銀行や財務省です。

為替介入が行われれば、USD/JPYが大きく動くことがあります。

では政府や中央銀行が価格を決めているのでしょうか。

政策は価格に巨大な影響を与える

政策金利。

金融政策。

市場介入。

これらは為替市場へ非常に大きな影響を与えます。

しかし、

「明日からUSD/JPYは150.000です」

と市場価格を直接設定しているわけではありません。

政策によって市場参加者の期待が変わる。

実際の資金フローが発生する。

その結果として市場価格が変化します。

為替制度によっては当局がレートを強く管理する通貨もありますが、主要な変動相場制通貨については市場参加者の取引を通じた価格形成が中心です。

為替介入も「市場で取引する」

日本で為替介入を実施する場合も、市場に対して実際の売買を行うことで影響を与えます。

巨大な注文フローが市場へ入る。

市場参加者がそれを察知する。

ポジションを変更する。

流動性供給者がQuoteを変更する。

こうした連鎖によって価格が大きく動くことがあります。

つまり中央銀行や政府は非常に強力な市場参加者になり得ますが、

常に市場価格を一方的に決定している存在

とは別です。

「市場価格」という言葉をどう考えればいい?

ここまで読むと、

「では結局、本当の価格はどれなの?」

と思うかもしれません。

この疑問への答えは、用途によって変わります。

あなたが今FX業者で取引したいなら、

その業者で実際に約定可能なBid / Ask

が最も重要です。

市場全体の方向を見たいなら、大手データプロバイダーや流動性の厚い市場の価格が参考になります。

過去検証をするなら、利用するデータセットの品質と出所が重要です。

つまり、

何を知りたいのかによって「見るべき価格」が変わる

ということです。

「世界唯一の本当のUSD/JPY」を探すより、

この価格は誰が、どの市場・流動性を基に、何の目的で提示しているのか?

と考えた方が、FX市場を正確に理解できます。

ここまで分かると、チャートの見え方が少し変わる

私たちは普段、ローソク足を見ています。

陽線。

陰線。

高値。

安値。

サポート。

レジスタンス。

しかし、その一本一本の裏側では、

銀行やマーケットメーカーがQuoteを変更し、

注文が流動性を消費し、

新しいBid / Askが提示され、

複数の市場間で価格差が調整され、

その結果が価格データとして私たちの画面へ届いています。

ローソク足そのものが市場ではありません。

チャートは、

市場で起きた価格変化を、後から見やすい形にまとめたもの

です。

そう考えると、

「このローソク足を誰が作った?」

という質問にも別の見方ができます。

FX業者が勝手に作ったわけでもない。

銀行一社が作ったわけでもない。

世界中の市場参加者の売買と価格提示が重なり、その一部をデータとして切り取った結果がチャートになっています。

まとめ – FXの価格は「誰か」が決めるのではなく、市場の中で生まれている

今回の記事は、

世界共通のFX取引所がないのに、なぜUSD/JPYには価格があるのか?

という疑問から始まりました。

インターバンク市場を追ってみると、そこには一つの巨大な取引所はありませんでした。

銀行。

マーケットメーカー。

LP。

電子取引Venue。

Prime Brokerageを利用する市場参加者。

機関投資家。

企業。

さまざまな参加者が複雑につながっています。

それぞれがBid / Askを提示し、取引します。

価格差が生まれれば、それを利用しようとする取引が入ります。

大きな注文が流動性を消費すれば、次の価格へ進みます。

ニュースが出れば、流動性供給者自身がQuoteを変更します。

こうした無数の動きの結果として、

「現在のUSD/JPY」

と私たちが呼んでいる価格が生まれます。

つまり、

FX価格を決める一人の管理者はいません。

そして、

世界共通の一つの板もありません。

それでも市場参加者同士が取引を続けることで、価格は互いに近づきながら絶えず更新されています。

だからこそ、

FX業者によってレートが少し違う。

チャートの高値・安値が微妙に違う。

スプレッドも違う。

Market Depthも違う。

それでも、まったく別世界の価格にはなりにくい。

すべてが同じ巨大なFX市場の中で結びついているからです。

しかし、ここでまた一つ疑問が残ります。

銀行も価格を提示する。

LPも価格を提示する。

マーケットメーカーも価格を提示する。

そして大量の注文がその流動性へぶつかる。

では――

実際に相場を動かしているのは誰なのでしょうか。

個人トレーダー?

ヘッジファンド?

大手銀行?

中央銀行?

アルゴリズム?

それとも、特定の誰かではなく「Order Flow」そのものなのでしょうか。

そして、最初の記事から残っているあの疑問。

自分の注文でチャートを動かすには、いったいどれだけの注文量が必要なのか?

価格がどこで生まれるのかが見えてきたところで、次はその価格を動かす力の正体へ進みます。

次回|FX市場の裏側・第04話

インターバンク市場の正体を追ってみると、そこに「世界中のFX注文が集まる一つの巨大取引所」が存在するわけではないことが見えてきました。

銀行・LP・ECNやVenueなど…

さまざまな市場参加者が価格を提示し、Liquidityを提供し、取引を行う。

そのネットワークの中でBidとAskが生まれ、私たちが見ているFXの価格につながっています。

つまり、

「価格はどこで生まれるのか?」

という疑問には、かなり近づくことができました。

しかし、まだ一つ足りません。

価格が存在する仕組みが分かっても、

なぜ、その価格が動くのか?

は別の問題だからです。

USD/JPYが150.00円にいるとして。

150.01円へ押し上げているのは誰なのでしょうか。

銀行?
ヘッジファンド?
中央銀行?
アルゴリズム?

それとも、もっと別のものなのでしょうか。

そして、第01話からずっと頭の片隅に残っていた疑問もあります。

結局、何Lotあればチャートを動かせる?

次回は、いよいよ「価格を動かす力」の正体へ進みます。

【FX市場の裏側|第04話】

価格が生まれる場所は分かった!では次に、その価格を動かしているものを追いかけます…

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